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アメリカン・スナイパー (3)


2015/12/16  ”名作映画シリーズ ”   
ーガソリン・スタンドの一角で息子と寛ぐカイルに、若い男が声を掛ける。   
 「クリス・カイルさんですか」「そうだ」男はズボンの裾をめくり、自らの義足の脚を見せる。傷痍軍人のその男は、イラク戦争の激戦地で敵軍の包囲の中、シールズ隊員のカイルに救出された元米兵だった。  
 そして戦場から平和な家庭、妻子の元に戻ったカイル自身も心身を蝕まれ、攻撃的になり、PTSD(心的外傷後ストレス障害)が現れる。「戦地から帰って来ても、あなたの心まで戻って来ないわ」と妻のタヤが呟く。  
 そして第3回イラク派遣へ。米海軍特殊部隊ネイビー・シールズの兵曹長、クリス・カイルは、さらなる激戦の戦場を転戦する。しかしシールズ・チーム3の戦友、マークが敵兵スナイパー「ムスタファ」に狙撃され、戦死。またチームの同僚、ライアンも軍事作戦中、「ムスタファ」の狙撃を受け両目を失明する。   
 本国に生還したカイルは戦友マークの葬儀に妻と共に参列し、病院の病室に負傷したライアンを見舞う。  
 「奴を追うな。復讐は止せ」と言うベッドの戦友ライアンに、「伝説のスナイパー」クリス・カイルは、「必ずおまえの敵を討つ」と誓う。
 そして第4回派遣。米軍基地の作戦室で、敵陣地の真っ只中に米軍の砦を建設するため、工兵を敵スナイパーから守る作戦に抜擢されるカイル。宿敵「ムスタファ」とのスナイパー合戦が始まる。建築中の現場に到着するが、工兵が遠方のビルの屋上から狙撃する「ムスタファ」に撃たれる。混乱する米軍部隊。  
 その建設現場の2階の屋上で、1920メートルの距離からスナイパー・ライフルのスコープで「ムスタファ」の姿を捉えると、渾身の狙撃を試みるカイル。その弾丸は、的確に「ムスタファ」を貫く。しかしこれは、飽くまで映画上のフィクション。自伝でも、「ムスタファ」という名の敵兵スナイパーとの狙撃戦について記述はない。もしそれを可能にする男がいるとすれば、さいとう・たかを原作「ゴルゴ13」の主人公、2キロ先の標的を狙撃する超A級スナイパー、デューク・東郷だけか(笑)  
 しかしその時、銃声を聞きつけた敵兵が、四方八方からAK47を手に建物目掛けて殺到する。屋上へ駆け上がる敵軍。応戦する米陸軍部隊とカイル。倒しても倒しても、次々と敵兵がやって来る。その激しい銃撃戦の最中、屋上で物陰に隠れカイルは、衛星電話で本国の愛する妻に連絡する。   
 「家に帰るよ」やがて砂嵐が近付き、味方の攻撃ヘリも接近できなくなる。敵兵は容赦なく銃撃を続ける。止むなく現場から撤退する米軍部隊。砂嵐で視界が利かない中、尚も銃撃戦が展開する。  
 「バッーーン!」「パーーン!」「パン!パパン!パーン!」  
 やっと救出部隊の大型ジープが到着。カイルは間一髪でジープに飛び乗り、窮地を脱出する。その後、カイルは本国へ無事生還し、海軍を除隊する。しかし長年、激戦の戦地を転戦し続けたため、カイルの耳の奥には戦場のヘリの爆音、銃声、女子供の悲鳴が鳴り響く。病院で医師の診断を受け、カイルは同じPTSDに悩む傷痍軍人たちの交流会に参加する。  
 かくして、妻子と共に平和な日々を過ごし、車椅子の帰還兵に射撃訓練を指導し、自らも身心の安定を取り戻したカイルだった。しかし2013年2月のその日、運命の日がやって来る。このシーンは残された遺族に配慮し、字幕だけで表現される。  
 「2013年2月2日、クリス・カイルはその日、力になろうとした元兵士によって殺された」  
 ラスト・シーンは、小雨の中、カイルの遺体の棺を乗せた白い車と白バイとパトカーの車列が走る場面で終わる。道路の沿道には、星条旗を手にした人々、男女、子供から大人まで人、人、人が、「伝説の狙撃手」英雄のクリス・カイルを見送るのであった。 

            (了)   

ー写真カットは、クリス・カイルの遺体を乗せた白い車に向け、星条旗を掲げ最期のお別れと見送りをする沿道の人々。本作ラスト・シーン、実際の葬儀の際の記録映像から。   

<付記>  
ー除隊後の2013年2月2日、クリス・カイルはテキサス州の射撃場で元海兵隊員、エディー・ルース(1)に射撃訓練を指導していたところ、ルースが当然背後から発砲。カイルは銃撃を受け、死亡した。ルースは、PTSDを患う米軍帰還兵だった。ここに、イラク戦争後、「銃社会」の米国、もう一つのアメリカの病と狂気がある。   

<脚注>  
ー(1)エディー・ルース:カイルと同じテキサス州出身。高校卒業後、海兵隊に入隊。2010年、海兵隊を除隊するが、しばしばPTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされる。  
 ルースの母親が、帰還兵のセラピーをしていたクリス・カイルに助けを求め、クリスは快諾。しかし2013年2月2日、ルースは射撃訓練中、カイルともう一人の退役軍人、チャド・リトルフィールドを銃撃した。二人は銃撃で死亡。ルースは現場から逃走したが、保安官によって逮捕される。2015年2月24日、裁判でエディー・ルース被告(27)に無期懲役の判決が言い渡された。

<参照データ>
ークリス・カイル「アメリカン・スナイパー」(2015年、早川ノンフィクション文庫)  
ー「増刊 ピース コンバット」”スナイパー特集”(2015年7月号)  
ーさいとう・たかを「ゴルゴ13」「Wアンコールvol.15」(2015年、小学館)  
ー「『アメリカン・スナイパー』を殺害した男の壮絶な半生に迫る」(井川智太、USAショックス 2015/3/20)

 

































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二階堂 新

Author:二階堂 新
 1955年生まれ、京都在住。フリーライター、フリーカメラマン、作家、企画主催者。皆さん、ヨ・ロ・シ・ク!

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